3年前に母を亡くしたとき、地元の福岡県から遠く離れた北海道に住んでいました。
職場に休みをもらい、地元に戻って保険の契約内容の確認や確定申告の行い方など、全て母が行ってくれていた諸手続きを、弟と手探りで行いました。
その際、全く何もわからなかった私たちに、地元の農協や役場、郵便局で働く方々が、「お母さんはこういうふうにしていたよ」と母のことを知っている人たちが親身になって教えてくださいました。
隣人との距離が近かったり、小さな町で、何かあるとすぐに噂が広まったり、そういった部分を窮屈に感じることばかりでした。
「そんなに住みやすいところだろうか…」と思っていましたが、この田舎町に私たち家族
は支えてもらっていたんだと、母を亡くしたときに気づきました。
その町の良さってなんでしょうか?
有名な観光地があること、様々な物を売っているお店があること、先進的な取り組みをしている学校があること、それも町の魅力の一つだと思います。しかし、その町の良さは、そういった表に見えているものだけではないはずです。
本山町に移り住んで一年が経ちました。
「住んでみてどうですか?」初めて会った人にそう聞かれることもあります。
どうでしょう。私が九州でも北海道でも、あまり住む土地自体にはこだわりがないからかもしれませんが、住んでみてどうかと聞かれるといまいちうまく答えることができません。
ただ、なぜここだったのか。それはこの町に一緒に働いてみたいと思う人たちがいたからです。
田舎にも都会にもそこで生活する人たちがいます。その人たちがその町そのものです。
たとえ一度は故郷を離れても、何かのタイミングで生まれた町に戻ったときに、今まで見えていなかったものがほんの少しだけ見えるようになる。
学生たちにはそんな感受性を持ち、生きていってほしいなと、心の中で願っています。
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