以前しまさんにアンパンマンミュージアムを勧めてもらったことがありました。
アンパンマンと聞いて思い出すのは、前の寮で会った男の子のことです。
発語はなく、日常生活の支援が必要な子でしたが、下校後の日課を終えると必ず本棚のところに行き、アンパンマンの絵本を手にとっては長い間見入っていました。
映画のDVDも持ってきていたので、出勤した日はほぼ毎日一緒にアンパンマンを観ることに。音楽も映像も頭に焼き付いていて、アンパンマンミュージアムと聞いた時は正直あまり行きたいとは思いませんでした。
でも不思議なものです。一度行ってみようか…。その思いもずっと自分の中にありました。
思えば絵本を描いてみたいと思ったきっかけもその男の子でした。毎日毎日手に取ってボロボロになった絵本。破れたページをビニールテープで補強してあげていると、一冊の絵本がこんなにも一人の人の人生を支える力を持っている。それまで何となく描いてきた絵でしたが、しっかりと学んでみたいと思ったのも彼とアンパンマンがきっかけです。
やなせたかしさんゆかりの地に来ることになったのもきっと何かの縁。
彼の代わりに行こう。
そう思って、先日ようやく行くことができました。
ここに彼がいたらどんな表情をするんだろう。たくさんのアンパンマンに囲まれて幸せそうな顔を見せてくれるかもしれない。でもきっとすぐに飽きて、あのボロボロの絵本に戻っていくんじゃないか。そんなことを考えていました。
私が初めて会った時には小学5年生だった彼も、今年で高校2年生になりました。
きっと今もやなせたかしさんが描いたあの絵本を片手に寮生活を頑張っている。その姿が目に浮かびます。
彼のせいで、私もすっかりアンパンマンに影響を受けた一人になってしまいました。
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